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対談ページ

未来の豊かな日本について語り合う

遊び場をなくした子供たち

spaeaker 土屋正忠(以下 土屋)

土屋忠正先生私は東京・武蔵野市の市長を6期、22年務めました。市議会議員時代を含めますと政治の世界に入って30年になります。この間、地域社会の子供たちが非常に変わりました。自然がなくなった、あるいは子供が身体を動かさなくなった、などの変化がありました。私はマンション住まいでしたが、子供たちが飛んだり跳ねたりすると、「静かにしなさい」とか「下に迷惑がかるだろ」などと言います。共同生活ですから仕方がないのですが、そんな中にいたら、子供はのびのびしなくなりますよ。


speaker 戸井田とおる(以下 戸井田)

子供が子供でなくなってしまうということですね。

spaeaker 土 屋

「外行って遊んでこい」と言っても、遊ぶところがないわけですよ。武蔵野市の場合も「土一升、金一升」の時代ですから遊んでいる土地ない。要するに地域に子供たちの遊び場がないのです。

speaker 戸井田

僕も子供の頃は近くの原っぱで、ダンボールや板で家を作ってその中で一晩泊まることをやりましたね。面白かったし、いろいろと想像力をかき立てられたりしました。そういう時代と今は遊びの質も変わってきていますね。

spaeaker 土 屋

そうなんです。我々の子供時代、昭和20年代、30年代は、いたるところに雑木林や麦畑があった。

speaker 戸井田

トンボやカエルを追っかけたりね。

戸井田とおると熱心に語る土屋先生spaeaker 土 屋

我々の子供時代は自然の中で体を動かして遊ぶ、集団で遊ぶ、ということがひとつの特徴でした。ところが自分の子供を見ていて分かったのは、○○ちゃんのところに遊びに行くって言っても○○ちゃんと遊んでいないのです。○○ちゃんの持っているファミコンソフトで遊ぶ、○○ちゃんの持っている漫画を読む、そういうことなのです。象徴的に言えば、昔の子供は自然の中で体を動かして集団で遊んだ、しかし今の子供は家の中で孤立して体を動かさないで遊んでいる。その極端な例が精神異常とも言える凄惨な事件ですね。

speaker 戸井田

ほかにも女の子を長期間監禁しちゃったとか。やはり子育ての失敗ですね。そばにいる母親が子供の許可がなければ部屋の中にも入れないとかね。

spaeaker 土 屋

おかしいですよ。

speaker 戸井田

子供の時代からきちっとしつけをしておけば、そんなことになるはずがない。でもそれができなかった。自分がどう子供を育てていいか分からないから子供の顔色を伺うみたいなことをする。そこに問題がありますね。

 

コミュニケーション能力が低下している日本人

spaeaker 土 屋

熱心に語る土屋忠正先生最近の子供たちを見ていると、まず家庭内のモラルがきちっと出来ていない、と同時にコミュニケーション能力が不足している、常識が欠如している、社会的な適応性がない、そのような子供がたくさんいます。今朝も電車で来ましたが、閉まりそうになったドアをちょっと押さえておいたときに駆け込んだ人は「やぁ」とか「どうも」って言えばいいものを何も言わずブスっとしている、こんな人が当たり前にいる、とりわけ若い人。そして表情も豊かじゃない。こういう現象がいたるところにありますね。2002年に日本でサッカーのワールドカップが開催されたとき、世界の人たち、とりわけヨーロッパの人たちが「世界一豊かな国で、世界一不機嫌な国」とメディアに書いた。「世界一豊かだけどどこのホテルに泊まってもブスっとしている」ということですよ。だから「いらっしゃいませ」くらい笑って言いなさいよ!(怒)

speaker 戸井田

挨拶だしね。

spaeaker 土 屋

たとえばヨーロッパでは、同じエレベーターに乗り合わせたりすると、必ずExcuse meとかGood morningなどと言います。それは「あなたに対して私は敵意を抱いていませんよ」という一種のコミュニケーションです。日本人はこうしたコミュニケーション能力が劣っている。

これはどうしてなのか、を突き詰めて考えてみると「小さな頃からコミュニケーションをしなくても生きていける社会」を我々が作ってしまったからです。日本をドラスティックに変えようと思えば、まず商店は6時頃閉める、それからエアコンはやめる、冷蔵庫もやめる、携帯やパソコンもやめる。この4つをやれば、たちどころにコミュニケーション能力は上がる(笑)。だって、クーラーがなければ暑いから窓を開けなければならないし、冷蔵庫がなければ食料は1〜2日しかもたないわけだから毎日買い物に行かなければならないからね。

「作る」「育てる」ことの大切さを知る

spaeaker 土 屋

日本は経済的にうまく発達して、物も機会も豊富にある、つまりいつでもどこでもお金さえあれば何でも買える。だから今は家庭の中に包丁がない、電子レンジだけが必需品となり、あとは要らない。まるで一人で生きていけるかのような錯覚に落ちいっている。だけど、本当はエネルギーひとつとってみても誰かが作っていて誰かが供給しているわけだし、そういう生産の仕組みに寄りかかって生きているのです。たまたまお金をもっていて、あるいはシステムをうまく活用できるから、他に寄りかからなくても生きていけるかの錯覚に陥っているのです。

野菜づくりについて熱心に語る戸井田とおるspeaker 戸井田

ルバング島で30年過ごした小野田さんは、着る物は自分で作らなければならないから、まず針を作った。そうしたら一本の針を作るのに丸2日もかかったそうです。スーパーに行けば針は10本セットが100円もしないで買える。でもそれを自分で作ろうと思っても出来ない人がほとんどだし、仮に一所懸命作ったとしても丸2日かけて針モドキしかできない。そういうことを知って初めて物のありがたみが分かるわけです。他のものでもそうです。食べるものにしても何にしても、出来上がっていて当たり前みたいな社会だから、「作る」ことを知らない。
僕は野菜作りをしたことがあります。種を蒔く、苗を植える、そうするとそれはもう自分のもので、人のものではない。野菜と心がひとつになる。気持ちが入ると、それが通じたかのように新芽が出て、伸びてきて、大きくなってくる。すると自分もまた一所懸命水をまく、世話をする。そういう成長過程を見ていると、すごいと思うのです。自然の神秘というか自然のエネルギーというか、それを子供が感じてくれる機会が今は無いですね。

spaeaker 土 屋

そうですね。

speaker 戸井田

野菜づくりについて熱心に語る戸井田とおる自分でやってみると分かりますが、植物を育てる、特に稲を育てる、そういう経験が子供には非常に大事なことなのです。それを知らない都会の子供が中心になってきている。大雑把な言い方をすれば戦前と今の社会とを比較したとき、良くなった部分もあるけれども、悪くなった部分もある。その当時にあった良いものが今はなくなってしまっている。植物に限らず、何かを育てるということは、子育ての疑似体験をすることだと思います。

spaeaker 土 屋

おっしゃるとおりです。

第2回につづく


対談テーマ募集

『最近気になるあの人ってどんな人?』『あの人の考えを聞いて欲しい』など、皆さんの声をもとに戸井田が多くの方々と対談し、お伝えしていきたいと思います。どうぞ、お気軽にご意見・ご要望をお聞かせ下さい。
多くの考え方や想いを持つ方々と、しっかりと率直に語り合います。